毛皮の豆知識・ムートンのすぐれた特徴とは?

ムートンのすぐれた特徴を知っていますか?

ムートン製品は羊の皮をその毛とともに利用したもので、皮革製品と毛皮製品のいいとこどりです。コートにしたり、ふわふわした敷物として利用したり、靴への加工も可能です。

通常、ふさふさの毛皮はその毛並みの美しさを外に出して使いますが、ムートンを衣料品に使う場合は表には皮、内側には毛がくるように使っています。一般の毛皮製品の多くは、毛の部分を表面(フェース)に出して使用しますが、ムートンは、皮の面、毛皮の裏側をきれいに加工してダブルフェースとして使用されます。

このような使い方をする加工製品には、ムートンのほかにも、ベビーラムや、チキャンラム、そして、ミンクなどですが、共通して皮の表面が丈夫で、ある程度の厚みがある毛皮が、このダブルフェース加工に適しています。

こうした毛皮の衣服は、裏生地を使用していませんから、とても薄くできて、重量も軽く仕上げることが可能ですし、加工技術をほどこせば、さまざまなデザインの製品を作ることが可能になります。

ところで、ムートンには、衣料用に向いている物と、靴などの皮革製品用に向いている物とがあることをご存じでしょうか?その特徴を理解すると、あなたも、ムートン通に一歩近づくことができるかもしれません。

硬いムートンと柔らかいムートン

当たり前のことですが、ムートンには毛の部分と皮の部分があります。羊の毛は、むくむくとして丸まった形状をしていますが、これは、昔から、刈り取り、加工をして、セーターなどの材料として利用されてきました。しかし、皮がついたままでダブルフェース加工をし、ムートンコートなどとしても使用されることがあります。もちろん、コートや、衣服の一部として使われるムートンは、皮が柔らかく、重量も軽いものが理想的です。しかし、安く売られているムートンコートの多くは、ずっしりと重く、ごわごわしているイメージがあります。それで「ムートンコートは重くて苦手」と決めつけている方もいるようです。

そのような低価格のコートの場合は、主にオーストラリア産のムートンが使用されていることが多いようです。一部の例外もありますが、オーストラリア産の羊は、収益性を高めるために、毛を刈る面積が多く、比較的、大きい羊として育てられているものが多いために、その毛皮は安価ですが、硬く、重量があるために、それを、そのまま服に加工してしまうと「重く、ごわごわ」した仕上りになってしまいます。毛の質はとても高いのですが、皮の面は丈夫で硬いというわけです。

こうしたオーストラリア産のムートンは、むしろ、靴などの加工製品に非常に向いていると言えます。皮が硬いとは言っても、柔軟性と保温性にすぐれているムートンの靴ですから、靴としては軽くて丈夫です。とくに、その中でも上質のムートンが使用されている製品は、高価でも人気があるのはもっともなことでしょう。

それでは、衣服などの加工に向いているムートンの毛皮は、どのようなものがいいのでしょうか?

衣料品としてのムートンの毛皮は、オーストラリア、トルコ、中国、イギリス、スペインなど、さまざまな地域や場所で作られていますが、総じて小型の羊から取られてなめされたものが衣料用の高級素材として用いられています。

とくにスペイン産の羊は、オーストラリア産の羊の半分ほどの大きさで、ムートン、レザーの世界では高級品に多く使用されています。スペイン産のトスカーナムートンは非常に有名です。しかし、こうした高級な衣服用のムートンは、逆に靴などには向いていません。しなやかで柔らかく軽いという特徴は、靴の場合になると使い物にならなくなってしまうからです。

いかがでしょうか?ムートンの毛皮製品とそのほかの毛皮の違いが、おわかりいただけたでしょうか?

ムートンは、水分を吸収、放出する機能に優れているので、蒸れたりすることもなく、温度を一定にするというすぐれた性質を持っています。また、羊の毛はコイル状になっているために、とても弾力があり、体重などで体にかかる圧力を分散してくれることから、コートや靴以外にも活躍しています。例えば、車のシートにムートンの毛皮を敷いたり、赤ちゃんや、寝たきりの方のベッドのシーツとしても、ムートンはとても適しています。

さらに、うれしいことに、その毛には、何と化粧品にも使われているラノリンという成分が含まれているために、お肌にもとても優しいんですよ。

ジュースなどの飲み物をこぼしても染みたりしませんし、燃えにくいという特徴もありますから、本当にいいとこずくめと言えるでしょう。

すぐれたムートンの特徴を活用し、楽しんでいきましょう。